行政書士 過去問
令和7年度
問34 (民法 問8)
問題文
不当利得に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
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問題
行政書士試験 令和7年度 問34(民法 問8) (訂正依頼・報告はこちら)
不当利得に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 盗品である動産甲を、盗品とは知らずに、甲と同種の物の販売業者から購入して引渡しを受けた買主が、所有者に甲を返還すべき場合、その買主は、所有者に対して、返還するまでの間における甲の使用利益相当額を支払わなければならない。
- 他人物である動産乙の売買契約に基づいてその引渡しを受けた買主が、その後乙を所有者に返還して売買契約を解除した場合、その買主は売主に対して、返還するまでの間における乙の使用利益相当額を支払う義務を負わない。
- 違法な賭博を目的とする契約に基づいて賭金を支払った者は、いつでも当該契約が無効であることを理由として、相手方に対して賭金の返還を求めることができる。
- 不倫関係の維持を目的として丙建物(既登記建物)の所有者Aが丙建物を受贈者Bに贈与してこれを引き渡したが、所有権移転登記手続が未了であった場合、その贈与者Aは当該契約が無効であることを理由として、Bに対して丙建物の返還を求めることができる。
- Aを貸主、Bを借主とする金銭消費貸借契約において、AがBに対して有する貸金債権につき、BがCから騙取した金銭をもって弁済を行った場合、Cは、弁済として受領した金銭が騙取金である旨をAが知っていたか否かを問わず、Aに対してその返還を求めることができる。
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この過去問の解説 (3件)
01
不当利得に関する問題です。
本選択肢では、盗品とは知らずに動産甲を購入した善意の買主が甲の使用利益相当額を支払わなければならないということであり、理不尽と言わざるを得ません。
使用利益相当額を支払わなければならないのは買主が悪意(動産甲が盗品であると知っていた)の場合であり、不適切な選択肢となります。
本選択肢では、動産乙の買主は購入後~返還までの間に動産乙を使用して利益を得ているため、使用利益相当額を支払う義務を負います。
したがって、不適切な選択肢となります。
賭博は公序良俗に反する不法原因給付(民法708条)であるため、原則として賭金の返還を求めることはできません。
したがって、不適切な選択肢となります。
他の選択肢の賭博と同様に、不倫行為も公序良俗に反します。不倫関係の維持を目的とする贈与契約は、公序良俗違反で無効という判例もあります。
本選択肢では、受贈者Bに贈与された建物丙が未登記であるため、贈与者Aは当該契約が無効であることを理由としてBに対して丙建物の返還を求めることができるため正解の選択肢となります。
Aを貸主、Bを借主とする金銭消費貸借契約において、AがBに対して有する貸金債権につきBがCから騙取した金銭をもって弁済を行った場合、Cは弁済として受領した金銭が騙取金である旨をAが知っていた(悪意だった)場合にはAに対してその返還を求めることができるため、不適切な選択肢となります。
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02
不当利得に関する判例は、単に「契約が無効だから返還すべき」といった形式的な処理ではなく、「誰の落ち度が大きいか」 を基準に、被害者を救済する公平の観点と、善意の第三者を保護する取引の安全の調整を重視しています。
妥当でない
「返還するまでの間における甲の使用利益相当額を支払わなければならない」としているところが誤りです。
判例は、盗品とは知らずに、甲と同種の物の販売業者から購入して引渡しを受けた買主(善意の占有者)は、所有者から購入代金の弁償があるまで、その動産について行使する権利があり、使用収益を取得する権利も有する(同法194条)。
よって、所有者が使用利益相当額の返還を求める理由はなく、買主は使用していた間の利益を支払う必要はない、としました。
(民法194条に基づく占有者と使用収益権/最判平12.6.27)
民法
第194条 占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。
妥当でない
「返還するまでの間における乙の使用利益相当額を支払う義務を負わない」としているところが誤りです。
売買契約が解除された場合、買主は原状回復義務を負い、解除までの間に生じた使用収益相当額も返還しなければなりません(民法545条1項・3項)。
判例は以下のとおりです。
買主は、売買契約に基づいて目的物の引渡しを受けていたが、所有者に返還することとなった。
これは、民法561条にいう「売主が買主に移転する義務」を果たせなかったということであり、買主は売買契約を解除するという意思表示をした。
解除により、売買契約の遡及的効力は失われ、契約がなかったのと同一の状態に戻す必要が生じ、そうであれば、買主が引渡しを受けてから解除するまでの間に使用して得た利益も返還させる必要がある、としました。
(他人物の売買契約の解除と買主の使用利益返還義務/最判昭51.2.13)
民法
第545条 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
3 第1項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。
第561条 他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。
妥当でない
「いつでも当該契約が無効であることを理由として、相手方に対して賭金の返還を求めることができる」としているところが誤りです。
ただし、不法な原因が受益者(相手方)のみにあるときは、返還請求できるとしています(民法708条)。
民法
第708条 不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。
妥当である
判例は、以下のとおりです。
贈与者の建物は未登記であったことから、贈与は引渡しにより完了し、民法708条にいう「給付」が成立するとした。
しかし、この贈与は不倫関係の維持を目的とするもので、公序良俗に反して無効である。
さらに、不法な原因(不倫関係の維持)を目的として、給付(引渡し)をした者は返還請求することはできない(民法708条)ことから、贈与者は建物の返還を求めることができない。
その結果として、所有権は受贈者に帰属する、としました。
(不法原因給付と未登記建物の贈与/最大判昭45.10.21)
これに対し、建物が贈与者によって登記済みであった場合、贈与は引渡しだけでは完了せず、所有権移転登記が必要となります。
「受贈者Bに贈与してこれを引き渡したが、所有権移転登記手続が未了であった」という場合は、民法708条の「給付」が成立していないため、同条は適用外となり、「公序良俗に反した無効な贈与」として所有権が移転しないため、贈与者は受贈者に対して建物の返還を求めることができる、ということです。
民法
第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
第708条 不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。
妥当でない
「弁済として受領した金銭が騙取金である旨をAが知っていたか否かを問わず」としているところが誤りです。
判例は、受領者(A)が悪意または重大な過失で(Bから)騙取金(へんしゅきん)を受け取った場合に限り、その取得は(Cに対して)法律上の原因(Aがその金銭を受け取ることにおける正当な根拠)を欠き、不当利得となる、としています。
(騙取又は横領した金銭と不当利得における法律上の原因/最判昭49.9.26)
つまり、Aが善意であれば返還義務はありません。
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03
本問は、民法上の不当利得(民法703条以下)に関して、①盗品の即時取得者の使用利益、②他人物売買における使用利益、③不法原因給付(708条)、④不法原因給付と未登記建物、⑤騙取金による第三者弁済、という不当利得の主要論点を横断的に問う問題です。
妥当でない
民法194条により、盗品・遺失物の場合、占有者が善意で競売・公の市場・同種の物の販売業者から買い受けたときは、被害者は代価を弁償しなければ返還を請求できません。この場合の買主は、代価弁償を受けるまでの間、正当な権原に基づいて占有しているのとされ、判例(最判昭26.11.27等の趣旨)上、使用利益の返還義務を負わないとされています。善意の即時取得者(民法192条)に準じた保護が与えられるため、使用利益相当額の支払義務はありません。
妥当でない
契約解除に伴う原状回復義務(民法545条)において、判例(最判昭51.2.13等)は、目的物の引渡しを受けた買主は、解除に際して使用利益相当額を返還する義務を負うとしています。買主が目的物を使用・収益していた期間の利益は、原状回復として返還すべきものです。
妥当でない
賭博契約は公序良俗違反(民法90条)で無効ですが、民法708条の不法原因給付に該当します。不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができません。賭金を支払った者も不法な原因について関与しているため、返還請求は認められません。
妥当である
不倫関係の維持を目的とする贈与は公序良俗違反(90条)で無効であり、不法原因給付(708条)の問題となります。しかし、判例(最大判昭45.10.21)は、不動産の場合、所有権移転登記が完了していなければ「給付」が完了したとはいえないと判示しました。建物の引渡しがなされていても、未登記(登記未移転)であれば、708条にいう「給付」には当たらず、贈与者は返還請求ができるとされています。
妥当でない
判例(最判昭49.9.26)は、騙取金による弁済について、弁済受領者(A)が騙取金であることを知っている場合(悪意)には、Cは不当利得としてAに返還を求めることができるとしましたが、Aが善意の場合には、Aは正当な債権の弁済として受領したものであり、法律上の原因があるため、返還請求は認められないとしています。
不法原因給付の「給付」概念が最重要です。不動産では登記移転まで完了して初めて「給付」とされます(最大判昭45.10.21)。引渡しだけでは足りません。708条は「クリーンハンズの原則」の考え方です。不法に関与した者は法の保護を受けられないという趣旨を理解しましょう。騙取金弁済の論点は、受領者の主観(善意・悪意)がポイントとなることを覚えておきましょう。
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