行政書士 過去問
令和7年度
問31 (民法 問5)

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問題

行政書士試験 令和7年度 問31(民法 問5) (訂正依頼・報告はこちら)

Aを売主、Zを買主とする売買契約に基づいて発生したAのZに対する売買代金債権(以下「本件債権」という。)を、AがBに譲渡し、その旨の債権譲渡通知(以下「本件債権譲渡通知」という。)が内容証明郵便によって行われ、Zに到達した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。
  • 本件債権譲渡通知がZに到達する前に、ZがすでにAに対して本件債権を弁済していた場合、Zは、Bから本件債権の弁済を請求されたとしても、これを拒むことができる。
  • Aは、本件債権をBに譲渡した直後にCに対しても譲渡し、その旨の債権譲渡通知が内容証明郵便によって行われ、これが本件債権譲渡通知と同時にZに到達した。Zが、Bから本件債権の弁済を求められた場合、同順位の対抗要件を具備したCの存在を理由として、これを拒むことができる。
  • Aは、本件債権をBに譲渡した直後にCに対しても譲渡し、その旨の債権譲渡通知が内容証明郵便によって行われ、これが本件債権譲渡通知と同時にZに到達したため、Zが、本件債権につき弁済供託を行った場合、Bは、本件債権全額については供託金の還付を請求することはできない。
  • 本件債権譲渡通知がZに到達する前に、ZがすでにAに対して貸金債権を有している場合、当該通知の到達後に、Aに対して本件債権と当該貸金債権を相殺する旨の意思表示を行ったとしても、Zは、この相殺による本件債権の消滅をBに対して主張することができる。
  • 本件債権譲渡通知がZに到達した後になって、AZ間の売買契約の履行としてAから引き渡された目的物の品質が契約に適合しておらず、ZのAに対する損害賠償請求権が発生したため、Zは、Aに対して本件債権と当該損害賠償請求権を相殺する旨の意思表示を行った。Zは、この相殺による本件債権の消滅をBに対して主張することができる。

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この過去問の解説 (2件)

01

債権譲渡の対抗要件を問う問題です。なお、本問では「妥当でない」ものを選択させる指示になっていることに注意してください。

 

本問で問われている、内容証明郵便による通知については、

・確定日付の有無では、日付「有り」が優先する

・すべて確定日付「有り」の場合、先着順で優先する

という前提知識が必要になります。

選択肢1. 本件債権譲渡通知がZに到達する前に、ZがすでにAに対して本件債権を弁済していた場合、Zは、Bから本件債権の弁済を請求されたとしても、これを拒むことができる。

債権譲渡通知が到達する前に、Zは既に弁済してしまっているため、ZはBから債権の弁済を請求されたとしても拒むことができます。(BがAに求償すればよいので、Zが二重に支払う必要はありません)

 

妥当な記述であるため、本問では不適切な選択肢となります。

選択肢2. Aは、本件債権をBに譲渡した直後にCに対しても譲渡し、その旨の債権譲渡通知が内容証明郵便によって行われ、これが本件債権譲渡通知と同時にZに到達した。Zが、Bから本件債権の弁済を求められた場合、同順位の対抗要件を具備したCの存在を理由として、これを拒むことができる。

Aは債権をBとCに二重譲渡しており、その旨の債権譲渡通知が同時にZに到達しています。(BとCは、同順位の対抗要件を具備しています)

 

BとCが同順位の対抗要件を具備していることから、ZはB又はCのいずれかに支払えばよく、同順位の対抗要件を具備したCの存在を理由として弁済を拒むことはできません。(本選択肢ではBから弁済を求められているため、Bに支払えば済むことです)

 

妥当でない記述であるため、本問では正解の選択肢となります。

選択肢3. Aは、本件債権をBに譲渡した直後にCに対しても譲渡し、その旨の債権譲渡通知が内容証明郵便によって行われ、これが本件債権譲渡通知と同時にZに到達したため、Zが、本件債権につき弁済供託を行った場合、Bは、本件債権全額については供託金の還付を請求することはできない。

BとCは同順位の対抗要件を具備していますが、Zは弁済供託により支払義務を果たしています。

 

判例では、BはCと本件債権を分割取得するとしているため、Bは本件債権全額については供託金の還付を請求することはできません。(BとCで協議して決めてください、ということです)

 

妥当な記述であるため、本問では不適切な選択肢となります。

選択肢4. 本件債権譲渡通知がZに到達する前に、ZがすでにAに対して貸金債権を有している場合、当該通知の到達後に、Aに対して本件債権と当該貸金債権を相殺する旨の意思表示を行ったとしても、Zは、この相殺による本件債権の消滅をBに対して主張することができる。

本選択肢は、民法469条1項で定められている相殺の特則に関する記述です。

 

妥当な記述であるため、本問では不適切な選択肢となります。

選択肢5. 本件債権譲渡通知がZに到達した後になって、AZ間の売買契約の履行としてAから引き渡された目的物の品質が契約に適合しておらず、ZのAに対する損害賠償請求権が発生したため、Zは、Aに対して本件債権と当該損害賠償請求権を相殺する旨の意思表示を行った。Zは、この相殺による本件債権の消滅をBに対して主張することができる。

ZのAに対する損害賠償請求権は、AZ間の売買契約の履行が不適合だったことが原因です。(つまり、損害賠償請求権が発生する以前に契約不適合の原因があり、たまたま後から損害賠償請求権が発生しただけです)

 

民法469条2項では、このような場合に例外的に相殺を認めています。

 

妥当な記述であるため、本問では不適切な選択肢となります。

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02

売主Aが買主Zに対して有する売買代金債権(本件債権)をBに譲渡し、内容証明郵便による債権譲渡通知がZに到達した。このことを前提に、①通知到達前の弁済の効力、②二重譲渡で通知が同時到達した場合の債務者の対応、③同場面での弁済供託と還付請求、④通知到達前に取得していた反対債権による相殺の可否、⑤通知到達後に同一契約から発生した損害賠償請求権による相殺、の5つの場面における法律関係が問われています。

選択肢1. 本件債権譲渡通知がZに到達する前に、ZがすでにAに対して本件債権を弁済していた場合、Zは、Bから本件債権の弁済を請求されたとしても、これを拒むことができる。

妥当である

債権譲渡の対抗要件(通知または承諾)が債務者に具備される前に、債務者が譲渡人Aに弁済した場合、その弁済は有効です(民法467条1項の反対解釈、468条1項)。通知到達前のZはまだ誰に支払うべきか知ることができないため、Aへの弁済により債権はすでに消滅しており、Bからの請求を拒絶できます。これは債務者保護の基本原則となります。

選択肢2. Aは、本件債権をBに譲渡した直後にCに対しても譲渡し、その旨の債権譲渡通知が内容証明郵便によって行われ、これが本件債権譲渡通知と同時にZに到達した。Zが、Bから本件債権の弁済を求められた場合、同順位の対抗要件を具備したCの存在を理由として、これを拒むことができる。

妥当でない

判例(最判昭和55年1月11日) によれば、確定日付のある証書による通知が同時に到達した場合、B・Cはいずれも同順位の対抗要件を具備しており、各譲受人は債務者に対してそれぞれ債権全額の弁済を請求することができるとされています。債務者Zは、他方の譲受人Cが存在することを理由としてBへの弁済を拒絶することはできません。Zとしては、いずれか一方に弁済すれば免責され、あるいは債権者不確知を理由に弁済供託をすることも可能ですが、弁済そのものを拒絶することは認められません。

選択肢3. Aは、本件債権をBに譲渡した直後にCに対しても譲渡し、その旨の債権譲渡通知が内容証明郵便によって行われ、これが本件債権譲渡通知と同時にZに到達したため、Zが、本件債権につき弁済供託を行った場合、Bは、本件債権全額については供託金の還付を請求することはできない。

妥当である

同時到達の場合、B・Cは同順位であるため、Zは誰に弁済すべきか知ることができず、弁済供託が認められます(民法494条)。供託後の還付請求については、判例(最判平成5年3月30日) により、同順位の各譲受人はそれぞれの債権額に応じて按分した額の範囲でのみ供託金の還付を請求できるとされています。したがって、Bが単独で全額の還付を請求することはできません。

選択肢4. 本件債権譲渡通知がZに到達する前に、ZがすでにAに対して貸金債権を有している場合、当該通知の到達後に、Aに対して本件債権と当該貸金債権を相殺する旨の意思表示を行ったとしても、Zは、この相殺による本件債権の消滅をBに対して主張することができる。

妥当である

民法469条1項により、債務者は対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権による相殺をもって譲受人に対抗できます。Zの貸金債権は通知到達前にすでに発生・取得されていたものですから、相殺の意思表示が通知到達後に行われたとしても、Bに対して相殺を主張できます。反対債権の発生時期が対抗要件具備時より前であれば足り、相殺の意思表示の時期は問いません。

選択肢5. 本件債権譲渡通知がZに到達した後になって、AZ間の売買契約の履行としてAから引き渡された目的物の品質が契約に適合しておらず、ZのAに対する損害賠償請求権が発生したため、Zは、Aに対して本件債権と当該損害賠償請求権を相殺する旨の意思表示を行った。Zは、この相殺による本件債権の消滅をBに対して主張することができる。

妥当である

民法469条2項2号により、債務者が対抗要件具備時より後に取得した債権であっても、その債権が譲渡された債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権であれば、相殺をもって譲受人に対抗できます。本件の損害賠償請求権は、通知到達後に発生したものですが、通知到達前に締結されたAZ間の売買契約を原因として生じたものであり、かつ譲渡された債権(売買代金債権)と同一の売買契約から生じた債権です。したがって、469条2項2号の要件を満たし、Zはこの相殺をBに対して主張できます。

まとめ

二重譲渡・同時到達の処理は

①債務者への請求段階では各譲受人は全額請求可能、債務者は弁済拒否不可

②供託後の還付段階では各譲受人は按分額のみ還付請求可能

この2つの区別をしましょう。

記述式対策としても重要ですので、問われても書けるようにしておきましょう。

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