行政書士 過去問
令和7年度
問30 (民法 問4)

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問題

行政書士試験 令和7年度 問30(民法 問4) (訂正依頼・報告はこちら)

Aは、Bとの間でA所有の建設機械甲(以下「甲」という。)をBに売却する旨の本件売買契約を締結し、甲をBに引き渡したが、弁済期が徒過したにもかかわらずBから代金の支払を受けていない。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
  • AはBに対して、催告した上で代金不払を理由として本件売買契約を解除する旨の通知を行った場合、その後Bは甲をCに売却して引き渡したとしても、Aは、Cに対して甲の返還を求めることができる。
  • DがBから甲の修理を請け負い、修理を終えて甲をBに返還したが報酬の支払を受けていない場合においても、Aは、甲につき先取特権を行使して、Dに先立って優先弁済を受けることができる。
  • BがEのために甲に質権を設定した場合においても、Aは、甲につき先取特権を行使して、Eに先立って優先弁済を受けることができる。
  • BがFのために甲を譲渡担保に供して占有改定の方法により引き渡した場合においても、Aは、甲につき先取特権を行使することができ、Fはこれに対して異議を述べることはできない。
  • 本件売買契約において所有権留保特約が設けられていた場合、BがGのために甲を譲渡担保に供して占有改定の方法により引き渡したとしても、Aは、Bに対して留保所有権に基づいて甲の引渡しを求めることができ、Gはこれに対して異議を述べることはできない。

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この過去問の解説 (2件)

01

代金先取特権と第三者との優劣関係、および所有権留保特約の効力の知識を問う、横断的な問題です。

 

与件文を確認すると、AB間で建設機械(以下、甲)の売買契約が締結され、A所有の甲がBに引き渡されています。

 

「物権は債権を破る」の法格言に照らし、動産売買の先取特権は占有を失った時点で効力を失います。(ただし、契約がある場合は別で、これが所有権留保特約のパターンです)

 

 

選択肢1. AはBに対して、催告した上で代金不払を理由として本件売買契約を解除する旨の通知を行った場合、その後Bは甲をCに売却して引き渡したとしても、Aは、Cに対して甲の返還を求めることができる。

与件文より、既にAは甲をBに引き渡しており、Bが甲をCに売却して引き渡したら、AはCに対して甲の返還を求めることができないため誤りの選択肢となります。

選択肢2. DがBから甲の修理を請け負い、修理を終えて甲をBに返還したが報酬の支払を受けていない場合においても、Aは、甲につき先取特権を行使して、Dに先立って優先弁済を受けることができる。

Dは甲を修理しており、Bに対して甲の修理代金という債権を有しています。

 

この場合にAの売主先取特権とDの修理代金先取特権が競合しますが、冒頭の解説よりAの動産売買の先取特権は占有を失った時点で効力を失っており、AはDに先立って優先弁済を受けることはできないため誤りの選択肢となります。

選択肢3. BがEのために甲に質権を設定した場合においても、Aは、甲につき先取特権を行使して、Eに先立って優先弁済を受けることができる。

冒頭の解説よりAの動産売買の先取特権は占有を失った時点で効力を失っており、BがEのために設定した質権に先立って優先弁済を受けることができないため誤りの選択肢となります。

選択肢4. BがFのために甲を譲渡担保に供して占有改定の方法により引き渡した場合においても、Aは、甲につき先取特権を行使することができ、Fはこれに対して異議を述べることはできない。

冒頭の解説よりAの動産売買の先取特権は占有を失った時点で効力を失っており、BがFのために甲を譲渡担保に供して占有改定の方法により引き渡した場合において、Aは甲につき先取特権を行使することができないため誤りの選択肢となります。

選択肢5. 本件売買契約において所有権留保特約が設けられていた場合、BがGのために甲を譲渡担保に供して占有改定の方法により引き渡したとしても、Aは、Bに対して留保所有権に基づいて甲の引渡しを求めることができ、Gはこれに対して異議を述べることはできない。

AB間で締結された売買契約に所有権留保特約が設けられており、Bは甲を占有したまま(つまり、代金は未払い)、甲をGに譲渡担保に供して占有改定の方法により引き渡しています。

 

判例では、Bは甲の代金を支払っていない(占有しているのみ)ため所有権はなく、BがGに譲渡担保を設定しても所有権がないため無効。つまりGは保護されないため、AはBに対して留保所有権に基づいて甲の引渡しを求めることができ、Gはこれに対して異議を述べることはできません。

 

したがって、本選択肢は正解の選択肢となります。

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02

売主Aが買主Bに建設機械甲を売却・引渡ししたが、Bが代金を支払わない。

この状況を前提に、Aの契約解除権、動産売買先取特権、所有権留保が、第三者(C・D・E・F・G)の権利とどのように優劣するかを問う問題です。動産の物権変動・担保物権の総合問題であり、条文知識と判例知識の双方が求められます。

選択肢1. AはBに対して、催告した上で代金不払を理由として本件売買契約を解除する旨の通知を行った場合、その後Bは甲をCに売却して引き渡したとしても、Aは、Cに対して甲の返還を求めることができる。

妥当でない

Aが催告のうえ解除した後にBがCに甲を売却・引渡した場合、Cは「解除後の第三者」にあたります。判例上、解除後の第三者との関係は対抗関係として処理されます。動産の対抗要件は引渡し(民法178条)であり、Cはすでに引渡しを受けているため対抗要件を備えています。したがって、AはCに対して甲の返還を求めることができません。

選択肢2. DがBから甲の修理を請け負い、修理を終えて甲をBに返還したが報酬の支払を受けていない場合においても、Aは、甲につき先取特権を行使して、Dに先立って優先弁済を受けることができる。

妥当でない

Dは甲を修理しているので、動産保存の先取特権(民法320条)を有します。民法330条1項により、同一動産上の特別先取特権の優先順位は、第1順位が動産保存、第2順位が動産売買です。Aの動産売買先取特権は第2順位であり、第1順位のDの動産保存先取特権に劣後します。したがってAはDに先立って優先弁済を受けることはできません。

選択肢3. BがEのために甲に質権を設定した場合においても、Aは、甲につき先取特権を行使して、Eに先立って優先弁済を受けることができる。

妥当でない

民法334条は「先取特権と動産質権とが競合する場合には、動産質権者は、第330条の規定による第一順位の先取特権者と同一の権利を有する」と規定しています。すなわち質権者Eは第1順位の先取特権者と同順位に位置づけられます。Aの動産売買先取特権は第2順位ですから、第1順位と同格の質権者Eに劣後します。したがってAはEに先立って優先弁済を受けることはできません。

選択肢4. BがFのために甲を譲渡担保に供して占有改定の方法により引き渡した場合においても、Aは、甲につき先取特権を行使することができ、Fはこれに対して異議を述べることはできない。

妥当でない

民法333条は「先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない」と規定しています。この「引渡し」に占有改定が含まれるかが論点となりますが、判例(最判昭和62年11月10日、最決平成22年11月24日)は、占有改定も333条の「引渡し」に該当すると解しています。BがFに占有改定により引き渡した時点で、Aは先取特権を行使できず、Fは異議を述べることができます。

選択肢5. 本件売買契約において所有権留保特約が設けられていた場合、BがGのために甲を譲渡担保に供して占有改定の方法により引き渡したとしても、Aは、Bに対して留保所有権に基づいて甲の引渡しを求めることができ、Gはこれに対して異議を述べることはできない。

妥当である

所有権留保特約がある場合、代金完済まで甲の所有権はAに留保されます。Bは所有権を持たない無権利者であり、BからGが譲渡担保権を有効に取得するには即時取得(民法192条)の成立が必要です。しかし判例(最判昭和35年2月11日)により、占有改定による引渡しでは即時取得は成立しません。したがってGは有効な権利を取得できず、Aは留保所有権に基づいてBに対し甲の引渡しを求めることができ、Gはこれに対して異議を述べることができません。

まとめ

占有改定と即時取得の関係、先取特権の優先順位、所有権留保と第三者の対抗関係は繰り返し出題されるテーマです。3つのポイントがあります。

 

①解除と第三者の対抗関係:解除前の第三者は民法545条1項ただし書で保護され、解除後の第三者との関係は対抗問題(動産は178条の引渡し)として処理される。

②先取特権の順位と制限:先取特権同士の順位は民法330条1項で「保存>売買」、質権者は334条により第1順位の先取特権者と同格、333条の「引渡し」には占有改定も含まれる(最判昭和62年、最決平成22年)

③占有改定をめぐる判例の対比:民法333条の「引渡し」→ 占有改定を含む、民法192条の即時取得 → 占有改定では成立しない

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